
訪問看護
介護4の父は週一回の訪問看護を受けている。
訪問看護では血圧を測ったり足湯をしてくれたりと色々なケアをしてくれるが、父が一番楽しみにしているのは看護師さんとの会話である。先日外出先から家に戻ると看護師さんが来ていて、ちょうど父の足湯とマッサージが終わったところであった。
そのタイミングで「さあさあどうぞ」と姉が茶菓子を運んできてお喋りタイムが始まった。父は絶好調でダジャレを連発し、看護師さんは笑いながら「頭の回転早いですよね~」と合いの手をいれる。そうか?と言いながら頭をぐるぐる振り回す父。おいおい脳梗塞3回してんねん・・「そっちの回転じゃないですよ~」と笑う看護師さん。
毎週このくだりが繰り返されているのだろう。
我が家に来る看護師さん達は若い人が多い。この日の担当は明るくてよく笑う30代前半の女性看護師だった。60も年が離れている年寄りのダジャレやボケ(惚けではない)にゲラゲラ笑いながら的確に突っ込む。父からしてみれば孫と同じくらいの年ごろだが、はたから見るとジェネレーションギャップを全く感じさせない。さすがプロだ。
この前来た20代の男性看護師さんも体操のお兄さんみたいに爽やかで、一生懸命に看護をしてくれていた。週一回の訪問看護だが普段家族としか喋らない父が楽しそうに話せる貴重な時間だ。そして彼ら彼女らの訪問看護は父だけではなく我々家族にも楽しいひと時を与えてくれている。
ケアマネのFちゃん
訪問看護の事業所を探してくれたのがケアマネージャーのFちゃんだ。このFちゃんは元々が姉の友人で姉の義両親(旦那さんのご両親)が要介護になって大変だった時に色々とお世話になったらしい。今度はウチの両親が立て続けに要介護となったため我が家のケアマネになってもらった。すごく頼りになるケアマネで本当に助かっている。
両親の要介護申請、介護レンタルの取次、訪問診療・訪問看護の紹介、介護タクシーの手配、デイサービスの提案、その他、大小様々な相談に乗ってくれる。
せん妄時代
父が脳梗塞で退院をした後に老人性せん妄の症状がひどくなった時期があった。医師の見立てによると脳梗塞による認知症が引き起こすせん妄だそうだ。
せん妄とは
せん妄の症状には、睡眠障害、幻覚・妄想、見当識障害、情動・気分の障害、神経症状があります。
(情動・気分の障害)
イライラ、錯乱、興奮、不安、眠気、活動性の低下、過活発、攻撃的、内向的など感情や人格の変化が起こります。
健康長寿ネットより
ありもしない妄想に悩まされ情緒が著しく不安定になり、家族に暴言を吐いたり、怒ったり泣いたり、歩けないのに家を出て行こうとしたり・・・などを繰り返す時期があった。最初は週一回くらいだったが、どんどんせん妄のペースが速くなり、最終的にはほぼ毎日昼夜問わずに(せん妄父さん)が出てくるようになってしまった。
とはいえ1日中せん妄の状態ではなく、急にせん妄のスイッチが入り怒りモードになる。せん妄状態に入ると悪い妄想(家族が敵になった、母が浮気した、etc.)に取り憑かれ、その場から逃げ出すために家を出て行こうとする。足が不自由なので一人で外に出ることはできないが、つかまり歩きで玄関まで行き鍵を開けようとする。危ないのでみんなで取り押さえると、喚いたり怒鳴ったりの修羅場になったことも何度かあった。そうなってしまったら辛抱強く父の話を聞き、否定や反論はせず時間をかけて説得する。そのうちにせん妄が落ち着いてきていつもの父に戻っていく。
本来の父は愛情に溢れ優しく温かい人間だが、せん妄の父はまったくの別人格になってしまう。いつもと違う父の姿に戸惑い泣く母はアルツハイマー病のため次の日にはケロッと忘れてしまう。母の脳は毎日リセットされてしまうため、父のせん妄を理解するできることができないのだ。
訪問診療
この日常はとてもつらくかかりつけの医師に相談したりもしたが、即効性のある手立てがなかった。たまらずケアマネのFちゃんに相談したところ、一度精神科の先生に診てもらおうということになり、精神科の訪問診療の手配をしてくれた。結果、その判断が正しく父のせん妄はすっかり治ることになる。
要は薬の飲み合わせが悪かったらしく、訪問診療の先生が薬の配合を変えてくれたのだ。父は計3回脳梗塞で倒れているが、1回目の脳梗塞を発症してから飲み続けている薬にせん妄を誘発してしまう成分が何種類か入っていることが分かった。まずはそれを差し替えて様子を見て改善されない場合は新たな薬を足していくというやり方だったが、父の場合は最初の差し替えだけで劇的に症状が良くなりせん妄の症状が出なくなった。薬の効果は意外と早く、差し替え後2~3日ほどで父の様子に変化が現れ、物言いも穏やかになりせん妄スイッチが入ることが無くなった。
3回目の脳梗塞後にせん妄を併発してしまい、それまで飲み続けていた薬にたまたません妄を誘発してしまう成分が入っていて更に症状がひどくなってしまった、ということみたいだ。とにかくせん妄の症状が無くなり以前の父に戻ってくれて一同ひと安心。父に確認はしていないが、せん妄時代(青春時代ではない)のことは全く覚えていないだろう。